光の「群速度」が光速を超えることが可能であるということは、理論的に古くから知られていた[3]。ある最近の実験では、セシウム原子中の非常に短い距離を、光速の300倍の群速度でレーザー光線を伝えることに成功した。2002年にはモンクトン大学の物理学者Alain Hachéは、超光速の群速度をもつパルスを、長い距離にわたって伝えることに初めて成功した。この実験では、同軸フォトニック結晶の120メートルケーブルの中を、光速の3倍の群速度のパルスが伝播した[4]。しかし、この技術を超光速の情報伝達のために使うことは不可能である。情報伝達の速度というのは前面速度(パルスの最初の立ち上がりが伝播する速さ)によっており、群速度と前面速度の積は物質中の光速の二乗に等しいからである。
このように光の群速度が光速を超えられるというのは、音速にあてはめて次のように理解できる。人々を、距離をあけて一列に並べたとする。そして、各々が自分の腕時計でタイミングを見はからい、短い間隔で順番に掛け声をあげさせるとする。このとき、彼らは隣の人の声を聞くのを待たずに声をあげることができる。またある例として、海岸に打ち上げられる波にも同じようなことが見られる。波と海岸線の間の角度が十分小さければ、砕ける波は、内陸を波が伝わるよりもずっと大きな速さで波長に沿って伝播することができる。
光のスポットと影 [編集]
たとえばレーザーが遠方にある物体の表面を横切ると、光のスポットの速度は簡単に光速を超えることができる[5]。遠方の物体に影を投射させても同様である。どちらの場合も、物質や情報が光速を超えて伝播しているわけではない。
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量子力学 [編集]
光速は、エバネッセント波が関与する現象、たとえばトンネル効果などにおいても超えることができる。エバネッセント波の位相速度と群速度は光速を超えうることが、実験によって示されている。しかしながら前面速度は光速を超えられないとされているため、この場合にも情報が光速を超えて伝播することはない。
量子力学では、ある種の量子的効果が光速を超えて伝播することがある(実際に、空間的隔たりのある物体同士の相互作用は長らく量子力学の問題であると見なされてきた。EPRパラドックスも参照)。たとえば、二つの粒子の量子状態が量子もつれの状態にあり、一方の粒子の状態が他方の粒子の状態を固定するものとする(ここでは、一方のスピンが+?でなければならず、他方が-?でなければならないとする)。観測されるまでは、二つの粒子は(+?, −?)および(−?, +?)という二つの量子状態の重ね合わせ状態にある。二つの粒子が離れ、一方の粒子が観測されて量子状態が決定されたとすると、自動的に他方の粒子の量子状態も決定される。もし、ある種の量子力学の解釈のように、量子状態についての情報が一つの粒子について局所的であるとするなら、次のように結論づけなければならない。すなわち、最初の観測がなされると、二つ目の粒子は即座に、その量子状態を占めるのである。しかしながら、最初の粒子が観測されたときにどちらの量子状態にあるかを制御することは不可能なので、この方法でも情報は伝播できない。物理法則は、情報がもっと賢い方法で伝播することをも妨げており、これは量子複製不可能定理やno-communication theoremへとつながることになった。